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みらいしごと図鑑

人気文筆家・金井真紀さんの「面白いことだけして生きる」実験生活とは!?

諸岡:マナビモ!みらいしごと図鑑、今回のゲストは文筆家でイラストレーターの金井真紀さんです。よろしくお願いします。

金井:よろしくお願いします。

諸岡:すごいなんかもう、後ろに本がびっしりですね。

金井:ごちゃごちゃして、はずかしいですね。

諸岡:かっこいい。いかにも文筆家の書斎!

金井真紀さんは2015年より、文筆家・イラストレーターとしてご活躍です。
自ら取材し、文章にし、絵も描く金井さん。
今回は文筆業の面白さをうかがいます。

諸岡:どう言う経緯で本を書くことになったんですか?

金井:その前ずーっとテレビの仕事をしてまして。最初はリサーチャーという調べものをする係で、そのあとは下取材に行って台本を書くような・・・なんと言っていいかわからないけど、構成作家と言えば構成作家なんですけども、そう言う仕事を30代のころまでやってました。ちょうど40になった頃だと思うんですけど、同じスタッフで長く番組をやってたんですけど、その番組が急に終わることになりまして。みんなもやる気だったのに急に終わることになったこともあって、なんかすごくがっかりしたんですよね。すごく荒れて飲んだ日とかもあったんですけど(苦笑)。
 なんかその時に・・・ちょっと猫うるさいです?猫、ちょっと黙らせてきますね。(お部屋の外へ)

諸岡:うるさいよーって言ってる(笑)。

金井:ごめんなさい!

諸岡:猫ちゃん大丈夫ですか。おかえりなさい・・・それで?

金井:番組が急に終わることになって、その時40歳くらいだったんですけど、すごく残念な気持ちはあったけど、これで「残念だ!」だけで終わらせるのは悔しいみたいな気持ちになって。
 そのテレビの仕事ですごく時間も使ってたし、その分収入もいただいてたけど、その全部がなくなるからすっごい突然暇になるし、突然収入もなくなるってなった時に、「あ、これはいいきっかけだから、面白いことだけをやって食べていけるかどうか実験してみよう」と思ったんですね。

諸岡:強い。

金井:猫ぐらいしか扶養家族もいないから、そう言うのもよかったんです、自由にできて。そう言うタイミングだったと思うんですけど。

諸岡:いや、でも40歳でそれまでの仕事がなくなるって、結構な恐ろしい状況だと思うんですよね。そこでさらに賭けに出るってすごいなって思うんですけど。どうしてその様な決心が?

金井:それまでの仕事も気に入ってはいたけれども、これだけじゃなくてもうちょっと暴れたいって言うのがどっかにあったと思うんです。あと、結構年取ってたというか・・・20代じゃなくってもう40にもなるっていうのが、逆に「こっからやってやろう!」みたいな。そういうおばさんがいたらいいなと思って。自分がなってみたら面白いかもしれないなと思って。まあ、実験なんでダメでもともとっていうか。で、今もまだ実験が継続してるっていう感じです。

諸岡:すごい。実験何年目ですか?

金井:6年目ですかね。

諸岡:おお。この6年間は、浮き沈みがあったりしますか?

金井:いやでも、実験だと思えばいいんですよ、なんでも。これはすごくいい考えなんだけど。実験なんで、気が乗らないことを無理してやる必要もないじゃないですか。なにせ面白いことを基準に選ぼうと思ってるから。まあ、ちょっと揺れることもあるんですよ。お金がもらえそうだけど気が乗らない時どうしよう・・・みたいな。

諸岡:ねえ!そこの悩み!

金井:そこはちょっと揺れるんですけど、何せ実験ですから。そこでお金取っちゃったら実験にならないから。そういう意味ではなんか、どうなる!?っていうのが面白い感じですね。
 また実験生活に入ると、今日もそうですけど、こうやってそういう話ができる人にお会いできたりとか。変な人って世の中にはいて、「まだまだ足りないな自分は!」みたいな。「もっと暴れてる人がいるなあ」とかって思うんですよね。
 自粛しちゃったり、やめといたほうがいいなとか、こんなことしたらおかしいんじゃないかとか、すごくそう思っていたんですよね、若い頃特に。自分の育った環境を思い出しても、うちの父とかすごい窮屈な人だったんで。私が何かやりたい!と思っても、「いや、そんなのやらないほうがいい。うまくいかないにきまってる」とか、冒険みたいなことしてると「危ない」とか、海外に出かけて行くなんて「危ないからやめたほうがいい」、夜道歩くのも「ダメだ!」とか、そういう窮屈な、安全がいいという考え方の人だったんで、自分もちょっとそうなってたんですけど。だから、年取ってからだんだんウズウズ〜ってなってきて(笑)。

金井:行けばどんどん先がありそうだなって感じですね、今の感想としては。

諸岡:楽しそう。ワクワクしてる感じがすごい伝わってくる。

諸岡:なんかもう、根っから「わあ、楽しんでやる〜!」っていう人生を歩んできてらっしゃるのかと思ったんですけど、むしろご家庭は厳しい感じで・・・

金井:そう、厳しいっていうか、なんかもう意地悪なお父さんだったんですよね、今思うと。だから逆に、風穴を開けてくれる大人みたいなのをすごく求めてて。自分の家ではないなと思ってたんで。10代の頃とか、すごく窮屈なところで窮屈な考えにまみれてた時に、本を読むと、世の中にはいろんな人がいるみたいだ、と。なんか世界が広いみたいだ!ってことが本を読んでちょっとずつ分かって、それがワクワクする唯一の感じで。それが最初にあったから、自分も「よし、暴れてやろう!」ってなった時に、昔の自分みたいに狭いところで窮屈に思ってる人に、「いや、世界は結構広くていろんな人がいるんですよ!」ってことを伝えたいなと思って書いてる感じですね。

諸岡:書くテーマってどうやって選んでるんですか?

金井:もともと、いろんな人をいっぱい集めたいという願望がありまして。

諸岡:ん?

金井:いろんな人を集めたいんですよね。集めて並べて「あ〜、いっぱいいろんな人がいるな」って眺めたいっていうだけなんですけど。それがすごい根っこにあるんです。

諸岡:なんでそういう人を集めたいという願望が生まれたんでしょう?

金井:10代の時に、図書館に行って何度も借りてた本があって。それが、スタッズ・ターケルという人の「仕事!」っていう本なんですけど。すごく分厚くて、無名のアメリカの130人だったかな?いろんな仕事の人のインタビューをただ載せてるだけの本なんですよ。名前も知らないようないろんな職業の人が、喋ってるんですよ、仕事のことについて。一つ一つは他愛ない感じのこともあるんですけど。ちょっとしたエピソードなんですけど。それが130人集まると、1980年代のその時のアメリカがその中にあるような感じがして。

 その時はあんまり意識してなかったけど、すごくその本が好きで。ただ、分厚くて高いから自分で買えなくて、何度も図書館に行って借りて。でも、全部なんか読めないんですよね、分厚いから。ちょこちょこっと好きなところを読んで、返して、また借りてって何度もしてて。

 なんかそれが根っこにすごくある気がしていて。自分もそういうふうにいろんなものを集めて、ごちゃごちゃごちゃごちゃ集まってるのがこの世の中だ、みたいなのが好きなんです。

諸岡:うーん、なるほど。