学べるコンテンツLET'S LEARN

みらいしごと図鑑

中島さち子さん!STEAM教育ってなに?どう学ぶ?どう使う?

諸岡:『マナビモ!みらいしごと図鑑』今回のゲストは、ジャズピアニストで数学者、株式会社steAm代表の中島さち子さんです。よろしくお願いします。

中島:よろしくお願いします。

諸岡:はじめまして。実際にお会いしたかったですけど、こうやってZOOMでお目にかかれるのも、なんか現代らしいなと言う感じで、とても嬉しく思っておりますけれども。その背景がまた(笑)。どちらにいらっしゃる感じですか?

中島:ありがとうございます。よく背景、この妙心寺退蔵院さんの石庭なんですけれど、なんかまあ、心が落ち着くと言うか。本当に春とか秋とかものすごく美しいんですけども。でも、こう言う常緑樹もたくさんあって、多分400年前からずっと変わっていないものと、日々日々変わるものとか混在している感じだと思うんですけれども。よくヴァーチャルでも使わせていただいています。

諸岡:あ、そうなんですね。実際にも、ヴァーチャルにもよく訪ねられていると。

中島:そうですね。その通りですね。

中島さち子さん、たくさんの肩書き

諸岡:わかりました。あの、それにしても中島さんの肩書の多さに、まずは私もびっくりしてるんですけれども、まず、ジャズピアニスト。

中島:はい、そうです。

諸岡:あと、数学者。

中島:数学者、ですかね、はい。

諸岡:これあの、高校生の時に国際数学オリンピックで金メダル?

中島:はい。

諸岡:それって、すごいことなんじゃないですか?

中島:そうですね、数学オリンピックはもう50〜60年前からあって、世界中で開催されている科学オリンピックの、多分一番長いのが数学オリンピックなんですけれど。なんか、受験とかとは全然違って早く正確に解くと言うよりは、3問で4時間半とかなので。それでも短いっちゃあ短いんですけれど。でも4時間半、なんでしょう・・・一見シンプルな問いを、でもなかなか解けない、何か本質が見えないみたいな感じでああでもないこうでもないって考えているうちに、なんかふっと霧が晴れて見れる!みたいな、どちらかと言うと創造性を競うと言うのか、遊ぶみたいな感じです。

諸岡:もう私には全く想像のできない世界・・・

中島:でも楽しいんですよ!本当に。なんかああいうのも日本でも、学校とかでも、パズルとかゲームみたいなものだけど、その先にいろんな社会ともつながるので、ああ言うのがもっと増えてもいいなと思うんですけれどもね。

株式会社steAmについて

諸岡:なるほど。なんか、そういうお話も是非後からまた聞かせていただきたいなと思うんですけども、最後にもう1つ、現在会社をお作りにになっていて、株式会社steAm代表ということで。このSTEAM、今すごく話題になっているワードだと思うんですけれども。このSTEAM教育のSTEAMを会社名にされるっていう気合いの入りようが。これはもう会社としては、STEAM教育を普及されたいということでお作りになっているんですか?

中島:そうですね、設立したのは2017年、ちょうど私がニューヨークに2018年から20年の2年間、ニューヨークをベースにしてたんですけど。いく前に作って。ただ、ニューヨークにいながら日本での仕事を継続させてもらって、今、こう拡大というか、させてもらってる会社なんですけど。STEAMってまあ、ご存じの方も多いと思うんですけども、Science、Technology、Engineeringで、ArtあるいはArts、でMathematics。科学、技術、工学、アートとかリベラルアーツと数学の頭文字な訳ですけど。

 STEAMって描くことで、教育もそうなんですけど、創造のアートの世界でも、アートとテクノロジーを組み合わせたり、それこそ数学を何かで表現してみたりとか、ありとあらゆる面白い専門領域をかけ算しやすい言葉だなっていうのもあって、そういう新しいものを生み出していく時に、いろんな人のいろんな知とか経験とか視点とか、そういうのを掛け合わせて、新しい、面白い未来を作って行こうみたいな気持ちで、STEAMっていうのを会社名にしました。

諸岡:なるほどなるほど。別に教育だけに注目しているということではなくて、そういう考え方と言いますか・・・

中島:まあでも、やっぱり教育の分野が、学び・遊びの再発見みたいなところが、いちばんの理由にはなっています。で、Aだけが大文字のsteAmの。なので、やっぱりアートとか。アートもただ絵を描くとか音楽とかだけじゃなくって、世界をどう見るかっていう新しい視点を生み出すみたいなことがアートだっていう考え方がやっぱり海外では強くて。そういう意味も含めて、Aが大事っていうのでAだけ大文字にして。mも大好きなんですけど。

STEAM教育でなにを学ぶ?

諸岡:なるほど、すごく丁寧に説明していただいたんですが、私この、STEM教育がSTEAM教育になって、すごく、言葉自体には興味があっていろいろ自分なりに理解しようとしてるんですけど、んー、なんかそれこそ水蒸気みたいなふわふわとして掴みきれないところがあって。サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、マセマティックス。全部、ちゃんと日本語には翻訳できるんですけれど・・・科学、技術、工学って言われた時に、なんとなくもう、曖昧というか、具体的にものが見えないというか想像しきれないところがあって。

中島:はい。はいはい。

諸岡:科学、技術・・・もう技術のあたりからもうあれ?ってなってきちゃうんですよね。そして、工学・・・で、アート・・・・。これ、もう本当に、どういうものなんでしょう?

中島:ね、あの、ここは本当に、特にSTEAMという言葉が日本に入ってくる中で、どう捉えられるかってことはすごく大事だと思っていて。だから、正しい定義はこれですっていうことではないんですけど。
 なんでしょう・・・何か正しいものを受け止めてもしょうがなくって、みんなでこれを使ってどう考えて何を進めるか次第だと思うんですけど。なんかでも、1つよく海外のところで書かれてて私がすごく納得してるのは、科学とか技術を学ぶっていうよりも、科学者のように考え。例えば、研究者のように考え、アーティストのように、とか、エンジニアのようにものを作る、みたいな。

そういうふうになんか、どちらかというと、科学とかアートっていうこう、きちっと世界をこう、一生懸命勉強します!っていうよりかは、もう研究者とかアーティストって、ここまでできたら何点みたいなことじゃなくても一生涯追求し続けるわけじゃないですか。でも、やっぱり何かが見えなくて、でも自分なりの何か、結局こう言うことがしたいのかなとか思いながら、自分なりに問いを立てて、それ、新しいものを生み出し続ける。才能あるなしとかじゃなくても、なんかこう、何かを生み出すことの楽しさって言うのがあって。やっぱりそれは数学でも、ただ過去の人が作った定理を一生懸命勉強して使えるようになるだけでは数学者とか研究者ではなくて、やっぱり新しい世界を生み出していく必要があるんですよね。それは音楽家もそうなんですけど。
 だから、そういうある種の作り手というか、自分たちが未来のかけらを作っていく自負心というか、よろこびみたいなものを育んでいくのがSTEAMだと思っています

STEAMをどう使う?

諸岡:なるほど。今本当に注目されていて、「STEAM教育やんなきゃ」「なんかプログラミングとかも始まったし」「なんとなくコンピュータ使って難しいことやらなきゃいけない」みたいなイメージなんですけど、そうではなくって、ものを作っていくために必要な、考え方の選択肢みたいな。

中島:そうですね。作るのも、もちろんフィジカルな物だけじゃなくてもいいんですけど、でも日本の学校ってあんまり・・・私、日本の学校の学びは素晴らしいと思うんだけど、図画工作ではものつくるけど、例えば数学とかでものを作るとか、科学でも、やっぱりどちらかというとペーパーで学んだり黒板で考えたり、調べてパワーポイントにまとめるとかは最近しだしてるけど、実際、たとえば電気が動いてるものをなんかやってみたり、実験ぐらいはするかもしれないけど、今度それを使ってなにか自分が発明しちゃおう!みたいなことってあんまりやらないけど、STEAMってどちらかというとそういう感じで、科学とか技術とかもやっぱ面白いのは面白いんですよ。
でも、科学単体っていうよりも、やっぱりそれをじゃあ、「え!ってことはここはこうなってるのかな?」ってシミュレーションしてみようとか、「技術を知ったらこんなこともできるんだ!」って。「じゃあ、あなたなにする?」みたいな。「じゃあ、電気を使ったらこんなことできて・・・」とかって、最初「楽しい!」ってなってる中で、でも誰かが困ってる。「あ、この時にこんなものをなにか考案したら、彼らは助かるんじゃないか」とか、なんかそういうわかりやすく言っちゃえば本当にものづくりでもいいと思うんですが、そういう何かを作り出すことを通して、実はやっぱりSTEAMのどの世界もすごいな!みたいなところにまた立ち返りつつ、行ったり来たりしながらやると。

 社会課題解決でもいいし、あの、もうちょっとコンセプトをなんか自分であれしてこれからの時代こうだ!っていう何かしら作品みたいなものを作るでもいいのかもしれないけど、なにかそういう作るを通して学ぶ、作ると知るの循環って言うふうに経産省の「未来の教室」ではSTEAMのことを書いてますけど、ただその時は、ワクワクを中心としたって言う、まんなかにワクワクを入れているんですが。

 なんか、やっぱり自分の興味関心から、何かでも、それを「好きだ〜」ってゲームをするだけじゃなくって、オバマさんがよく、っていうか何回か言ってることは、ゲームをするだけじゃなくてゲームを作る側になろうみたいなこととか。あとやっぱり未来を作るのは君たちだよ!みたいなメッセージを必ずSTEM教育ですけど、そのところで必ず言ってるんですね。だから、STEM教育が何かっていうよりも、そこで確立されている精神としては、なんか、プログラミングを学ぼうとか、テクノロジーを学ぼうっていうよりは、そういうものを使うと作り手になれるので、これからの時代は。必ずしもゲーム・・・でも、ゲームを作ろうと思ったら、ゲームを知るだけじゃなくって、社会のことを知ったり、あそこであんなことをこれで何か気づかせたいとか、そういういろんな視点が必要になってきて。やっぱり作り手になるっていうことはものすごく総合的にいろんなことを学ばなきゃいけなくって。そこには実は、科学とか技術とか、ま、エンジニアも日本では馴染みがない言葉ですけど、ものづくりって言っちゃっていいと思うんですけど、エンジニアも。あと、アートとか数学とか、そういうものをフル総動員していろんな、なんかね、新しい未来を作る挑戦をしようみたいな、そういうものがSTEAMなのかなと思っています。

諸岡:なるほど、すこーしわかってきました。

中島:すこーし(苦笑)。

諸岡:なんかその曖昧糢糊としていたところが、例えばまあ、それこそ例えで出していただいた、ゲームを作るのには、いろんな社会の状況だとかいろんなことを考慮して、アート的なことで魅力を出していったりとか、総合的にものづくりをしていくときに、いろんなことを横断的に考えて行こうってことかなっていう風に、なんとなくわかってきました。

中島:結構数学も使うんですよね。レアキャラ何%ぐらい出そうかとか、

諸岡:ああ、確かに、バランスとかね。

中島:ここに、こういう曲線を描きたいけどどうすればいいかなとか、重力とか。そう。いろんなものを実は使うので、そうなんです。

STEAMの無限のひろがり

諸岡:たしかに。そうですねえ、わかりました。これをでも教育の現場でやろうとした時って、具体的に子どもたちってどういう風に学んでいくものなんでしょうか?

中島:そうですね。海外だと本当にSTEAMの絵本みたいなのがいっぱい出ていて、学校の先生も使ってるし、おうちでもみんなやってたりして。でも、読んでみるとすごい、なんていうんでうすかね、ほとんど遊びですね。なんかもうカラフルな写真がいっぱいあって、やっぱりやり方は書いてあるんだけど、みんな結果が違ってくるような割とざっくりとしたところで。でもなんか、例えば、それこそ電気でも、導線の、電気が通るペンで書いた円とかだと、それだけでハンダゴテとか使わなくても回路作れちゃったりするんで。そう。でもそこでどんな絵を描いて何作ろうかとか。まあね、必ずしも電気通さなくても、それこそスライムとかも大好きで私よく使うんですけれど、あ、娘が好きなんですけど(笑)。スライムとかだってあそこの中には化学もいっぱいあるし、匂いも使うし音も使うしみたいな。そういう必ずしもプログラミングしてもしなくてもいいし、電気を使っても使わなくてもいいし、もっと自然の中からいろんな花とか取ってきて染色してみようとか、で、染色する時はなんかこういう風に折りたたんでこうやるとこんな模様になった、これは数学があるとか。なんか、本当に今までのありとあらゆる遊びを進化させたものから、でも実はこれをやってるうちに、「えっ、これじゃあこう折りたたんだらどうなるかな?」とか、「これとこれ混ぜ合わせたらどんな色になるかな?」とか。

 まあ、子供たちって遊んでるとそういうことどんどん学ぶわけですけど、実はだから、だいたい小学校に入るとだんだん遊ばくなっちゃって、もう分けられちゃって勉強と遊びってなるけど、でも実は遊びの中ってものすごく学べることがいっぱいあるので、そこは先人の知も時々結びつけながら、でもなんか遊んで自分なりのものを作る中で、今までの知がいかに大事かっていうことが見えてくるみたいな循環。

 で、なかなか具体が見えないと難しいっていうのはその通りだと思うので、そういう絵本でもそうだし、日本でも今ようやくというか、具体的なもので必ずしもお金を払わなくても見れるようなオープンソースとか、安く見れるみたいなものとかが、少しずつできてきていると思っていて。それこそ今、経産省の「未来の教室」私、結構関わっていて。あの、なぜ文科省さんじゃなくて経産省だとか、色々あると思うけど。いろいろあるとはいえ。各所で色々賛否両論ありながらもうそうやって議論が起こってくるころはいいことだと思っているんですが。「未来の教室」ではSTEAMライブラリーというを今準備していて、3月ぐらいに24事業者から多分全部で50〜60のテーマのSTEAMプログラムが無償公開される予定なんですね。で、まあ経産省なんで多くの場合社会課題解決みたいなものも多いんですけど、私たち自身は10テーマ関わっていて、うち5テーマは特にプレイフル・コーディングとか、プレイフル・フィジカルコンピューティングとかで、センサーでなんか動かすとか、プレイフルAIとか、数学×デザイン・音楽・宇宙ってやつと、数学×保健みたいなテーマで。

諸岡:本当に多岐にわたるんですね。

中島:そうですね。その辺が無料見れるようになったら、そこからまたスパークして、こんなの作ってみましたみたいなのが出てきたり、いや私はこんなのやってみたとか、色々でてくるかなと。やっぱり具体は必要だとは思ってます。

諸岡:なるほど、なんか、うん、また1段ステップアップしました、理解が(笑)。

中島:ありがとうございます。

諸岡:でもその、楽しみ、遊ぶ中にいろんなSTEAMの要素があるっていうのもそうなんですけど、なんか、私たち古い昭和生まれの教育で育ってきてると、やっぱり勉強ってペーパーとか一生懸命詰めこまなきゃいけないとか、なんかそういう風に刷り込まれてしまってて、本当に楽しんでいいのかなとか、まあ楽しむにもやっぱり結局範囲が決められてるんじゃないのかなとか。なんかこう、本当にそれって楽しいの?っていう気持ちがどこかに生まれてしまいそうな気がするんですけど、子どもたちは本当にそんなに楽しんでいいんですか?で、楽しめるんですか?

中島:もうめちゃ楽しめると思います。で、ただやっぱり、確かに具体がないと。楽しいんだけど、やっぱり本当は遊びって無限に発展できるんだけど、でもね、こう、1人だったり学校の先生だったりだけに閉じてると、やっぱりなかなか見えないリンクっていっぱいあるじゃないですか。あ、これとこれって実は近いから、こうするとこんな発展も実はできたとかっていうのが、見えきらないから、やっぱりつながっていくことがこれからすごく大事だとは思います。で、じゃないと、結局ただ楽しかったで終わっちゃったりとか、あとは、本当に悪い意味で使われるような感じの遊びになっちゃったりとかする可能性はある。だからやっぱり敷居が低いことは大事なんですけど、誰でも入れるように。でも、そこがすごい高い天井のところまでいけるよっていうようなとこは、やっぱり何かしらの形で担保してあげる必要はあると思っていて。だからそこが、具体でものを作っていく時でもすごく大事かな。

 ただ、社会に出ると、それこそ人類がずーっと誰かこういうのに興味を持った人がすごい深く掘り下げたりして、いろんな世界が出来上がっちゃうわけですよね、学問としても、企業の技術としてとかでも。なんか「すごい人がやった!」って思ってるけど、実は「あ、そうか!そうか!!」っていろんな人が深掘りしてって、天井が高くなってるだけで、ここ(最初のそうか!)の部分があれば、なんかそんなに難しいことでもないというか。天才って、完全にギャップがある人たちのことじゃなくて、単純にこれ(最初のそうか!)に夢中になっちゃってどんどんどんどん深堀りを深めてった人だと思うんですよ。だからなんかここ(最初のそうか!)が、うまくブレークダウンされてれば・・・これもだから1通りじゃなくてもこういういろんな深掘りの仕方があるので、なんかどこかに引っかかっては、「じゃあ、次なるこっちに行ってみようか?」「ああ、こっち行ってみよう!」みたいな感じで、だんだんだんだん深掘りが、自分なりのパスが描けていけるはずなんですね。で、今はこれ抽象的に言ってますけど、具体の1つ1つのテーマに対してもできることは有限でも、やっていって多数の道があれば、多分みんな選びとっていけるのかなあと思います。

その時、学校の先生は?

諸岡:でもそのSTEAM教育を学校でやろうとした時に、それこそ、先生の知識の範囲でしかフォローしてあげられなかったりするのかな?なんて想像すると、STEAMの無限の広がりを子どもたちに提供するためには、相当な先生のスキルが必要なんじゃないかなって。

中島:えっとですね、先生がだからすべての専門家であることはもはや絶対無理なので、なんかその先生の専門性の意味が少し変わってくるというか、少しシフトする?先生って多分、誰よりも子どもたちと接してるというか、見てる人であって。もしかしたら、やっぱりこの子はこういうことが心が躍る!とかっていうのをもしかしたら一番見てる人かもしれないわけですよね。まあ、先生によるかもしれないけれども。でも、多分良い先生ってそういうところがあると思っていて。
 あと、もちろん教科とかの専門性っていうとこでも、教科を愛してたりして、数学研究をすごくしてたりとか、私はもう美術といえば!みたいに思ったりで、でもそういうこともすごく大事。ただ、これから本当に子どもたちが自由に自分たちの興味を持ちはじめてやっていくと、とてもじゃないけど先生たちの専門性で追いきれない。だからもうそこは最初っからむしろ諦めるべきで。なんか変な言い方ですけど。

諸岡:あ、いえいえ。

中島:あの、なんでしょ、だから子供たちが意外に元気になる時って、先生が分かんないって言ったり、私とかでも・・・子どもたちとの教育の場って大好きなんですけど、私が失敗すればするほどみんな盛り上がるというか。なんかね、なんか急にちょっと、自分でもいけんじゃないか!?っていう感じになるじゃないですか。

諸岡:はいはい(笑)。

中島:だから、必ずしも先生ってそんな理想像じゃなくっても良くて。なんかむしろ悩んででたりあ、あれ、違う!?ってなってたりとか。わかんないなっていって、でも真剣に悩むというか。カッコつけちゃってそれは、なんかね、「調べるね、本当は知ってるんだけどさ」みたいにするよりは、一緒に悩んだり、学んだり、面白い!ってなったりとかっていう。結局研究者とかは90歳とかになっても「私はまだまだ」っていう人も多い中で。

諸岡:おお、なるほど。

中島:そう、だから一緒に学び続けるというか、楽しむとか悩んだり。主役はやっぱり子供たちというか、学び手なので。でも、先生も面白くなっちゃったら一緒に悩めばいいし、あるいは誰かに引き合わせてもいいかもしれないし。学びの伴奏者というか、そういう風になれればいいのかな。で、先生がよく知ってることなら、もちろん伝えてあげればいいし。でも、こう、知ってるか知らないかって、ニューヨークの時にも私の大好きな先生たちとかでもよく言ってたんですけど、大したことじゃない、と。それは赤ちゃんの時は誰も知らないから、どこかで知っただけで、それが早いかどうかだけだから。だから、知ってるかどうかっていうことは、もう恥ずかしげもなく、知ってれば「あ、知ってる」って言って共有すればいいし、知らなかったら「知らない」って言ってその時に学べばいいっていうだけの話で。だから、先生とかは先に生まれてる分、少し知ってることで多いことはあるかもしれないけど、でもまあ、大した差・・特に今の時代は、レベルとかもあって。

 そう、それはもう専門家って言われる人たちも、夢中になってうわーってやってるけど、それでもまだまだ分かってなかったり、もしかしたら間違ってることもいっぱいあるわけで。なんかそういう、いろんな人の、子どもは子どもなりの専門性があるから、でもお互い1人じゃ見えない世界が、こう掛け合わせることで見えたりするので、まあちょっと理想論的ではありますけれども、そういう風に学びはシフトしてくるだろうと。で、まあ、もちろん今のカリキュラムの中のどの授業をどういう風にしたらいいのかとか、より具体的な話とかで、先生も忙しいとか色々あると思うんですけれども。ただ、そうですね。ある種のあるべき、もう全部の枠を飛び越えた理想論みたいな話と、じゃあ今のこの現実からどういう風にしてったらいいかなっていう話を、両方ちゃんとしていけば、全然前向きにこう「How can we do it?」って。なんか、「できるかな…できるかな…」って思うより、どうやったらできるかな?っていう、一歩ずつをみんなで考えていけば、色々できることがあるかな。忙しすぎることはやめよう、とか。

諸岡:そうですよね、なるほど。そっか、先生は、教育、教えて育てるっていうよりは、本当に子どもたちと一緒にワクワクしたり、間違えたり、そういうことが大事になってくるかもしれないんですね。

中島:はい、親もそうですよね。

諸岡:あ、本当ですねぇ。一緒につまずくのは、私、得意なんで!

中島:ね!それはすごく大事だと思います!私もそうです。本当に。

諸岡:本当ですか?

中島:本当です、本当です(笑)。

中島さち子さんプロフィール

ジャズピアニスト / 数学研究者
STEAM教育家 / メディアアーティスト
steAm, Inc. CEO / STEAM Sports Laboratory 取締役
大阪・関西万博プロデューサー(担当テーマ:いのちを高める)
内閣府 STEM Girls Ambassador

株式会社steAmウェブサイト:
https://steam21.com/